お正月休みに買って、とりあえず2回読み、そして3回目も読み終えて、今4回目を読んでいる本があります。「勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論」です。
もちろん原田泳幸とは、日本マクドナルドの社長のことです。テレビなどメディアにもよく出演されていますので、皆さんもご存じのはず。今最も注目されている経営者の一人です。
氏は2004年に社長に就任しましたが、それ以前のマクドナルドはというと、1997年~2003年まで7年連続で既存店売上高が昨年対比でマイナスという、どん底状態でした。
しかし著者の就任した2004年以降今日まで、なんと7年連続プラスに、文字通りV字回復したのです。既存店売上高だけではありません。全店売上でも、なんと3867億から5427億と1560億も増えました。特筆すべきは、それが店舗の構造改革によって3900店から3300店と、店舗数が600も減った中で実現されているという点です。一店舗当たりの売上がいかに増えたかということですね。
それと歩調を合わせるように、ブランドジャパンという日本最大のブランド評価調査で、2007年の81位から、2010年の調査では、1位グーグル、2位ユニクロ、3位パナソニックに次いで、なんと4位に躍進しました。業績が良ければすべてが上手くいく、ポジティブスパイラルの好例ですね。私もいつも思っていますが、「全ては業績次第」ということです。
このように7年連続マイナスから一転、7年連続プラスへと業績をⅤ字回復させたのは、氏が一体何をしたからなのか?!そして何をしなくなったからなのか?それが書かれたのがこの本です。われわれにとってなじみの深い商品メニューの開発のこと、店舗のこと。ブランドのこと。フランチャイズシステムのこと。氏がこの7年間に行ってきたあらゆる改革のことがが書かれています。
今回のブログは、この本をお勧めするアフィリエイトみたいになっていますが、ぜひみんなには読んでいただきたいからです。タイトルからしてこの本は、私たちのような経営者層、あるいはマネージメント業務を行っているビジネスパーソン向きと思いがちですが、決してそうではありません。小難しい経営書ではないのです。なにより、いくら氏のような経営センスのある社長が作った戦略でも、実際にやるのは全国に16万もいるクルー(アルバイトの呼び名)たちです。彼らが実行しなければ、氏の戦略も絵に描いたモチに過ぎません。つまり、氏の描いた戦略をアルバイトを含めた全スタッフがきちんと実行したから業績がプラスになったわけです。
北西には、他人をどのように役立つか
彼らが何を求められ、何を思い、何を実行し、そして業績がアップしたのか?!そんな従業員視点で読んで考えることが出来れば、皆さんにとっても有用な本になります。
だいいち、滅茶苦茶身近な存在ですから、すごくとっつきやすいですし、書かれていることがとてもよく理解できます。メガマックやクォーターパウンダーやビックアメリカシリーズの話が出てきたりしますから。
極めつけは、仕事や人生に関する、氏の若者たちへのアドバイスが書かれていること。実はこの本は、過去に行われた氏の講演内容を加筆修正したもので、その講演中にやり取りされた著者と参加者の質問&回答がページの4割も占められています。そこには、もちろんビジネスに関する質問もありますが、自己啓発的なもの、勉強法に関するもの、キャリアディベロップメントに関する質問とそれに対する一流の人間だけが答えることのできる回答が書かれてあり、それを読むだけでも価値があると思います。ぜひ当社の若い従業員には買って読んでいただきたいですね。最近では一番のお勧め本です。
今回はこれで終わってもよいのですが、せっかくですから私がこの本から学び、そして自社の経営にぜひ活かしたいと思った点などについて、少しシェアしておこうと思います。
この7年間に氏が行ってきた改革はいくつかあります。その時その時で一番優先度の高いものを順番にやってこられたわけです。100円マック、メガマックやマックグリドルなどの新メニューの開発、価格改定、24時間営業、地域別価格の導入、マックでDSや携帯クーポンなどのEマーケティング、店舗デザイン改革などなど。
これら一つ一つには当然戦略的意味があり、それらの掛け算によってV字回復が実現されたわけですが、それら以外のことで常に取り組んできた最も大事なことがあります。それは・・・・
QSC(プラスV)です。
とにかく氏は、QSCを一番大事にしました。2004年就任時には、「QSC以外はやるな!」とさえ言っていますから。そして同年、それだけで業績がプラスに。
そして2年目もQSC!3年目もQSC!そして今も。
7年連続プラスを実現して来れたのは、決して「複雑なこと」をやってきたからではなかったんですね。確かに「簡単なこと」ではありませんが、なるほど「単純なこと」を地道に行ってきたから。それを氏の言葉で言うと、
「基本に立ち返れ。基本以外は何もしなくていい」
「当たり前のことをちゃんとやれ!」
になります。外資系の会社らしく、
「Back to the basic」
とも言っていますが。
後先になりましたが、念のためQSCという言葉の意味を確認しておくと、QSCとは外食産業では当たり前の用語で、
鉛筆は何を意味する
Quality:美味しいもの、安全なもの、できたてを
Service:スピーディーに、笑顔とおもてなしの心で
Cleanliness:綺麗なお店で
食べていただく。この頭文字を取ってQSC。原田氏は、このQSCをとにかく一生懸命やれと。それ以外はやらなくていいと。
マクドナルドの場合は、それらQSCに、100円マックや200円コンビ、あるいはメガマック、クオーターパウンダー、ビッグアメリカシリーズなどのような商品に見て取れる通り、驚くような価値ある体験、という意味のValueのVが加わり、QSC+Vと呼んで、最も基本的かつ最も重要な戦略的課題として実行されてきたのです。
繰り返しになって恐縮ですが、QSCは、飲食店ならどのお店でも取り組むべき、いわば当たり前のこと、です。決して複雑なことではありませんよね。けれど実行するにはそう簡単なことではないことも確かです。
というのも、今まではハンバーガーを作り置きしていた。スピーディーに提供するためです。しかしながら作り置きは出来立てではありませんから美味しくないですよね。そこで、作り置きをやめて注文を受けてから作ることにした。オーダーを受けてからバンズを焼いて、マスタードとケチャップをトッピングして、ピクルスとオニオン、パティを載せるまでわずか50秒で出来るようにした。「メイドフォー・ユー」という独自のキッチンシステムの完成です。そしてナントこれを、わずか半年で全店で出来るようにした。
でもこれらは決して簡単なことではありませんよ。だからこそ氏の就任前まではやってこなかった。だから7年間マイナスが続いた。これを氏は徹底してやるようにした。だから7年プラスが続いている。ただそれだけだと。
皆さんは覚えていますよね。ハクロマークの「勝利の方程式」という概念を。勝利の方程式とは、端的に言うとリピート(勝利)につながる成功パターンのこと、でしたね。
私たちがある戦略的行動をとれば
↓
お客様が好意的な反応をしてくれて
↓
満足度などの直前の成果が上がって
↓
再びご利用いただく
という方程式。その一番最初のとるべき戦略行動を見つけ出すことを勝利の方程式を解くと言います。これに照らして、マクドナルドの「勝利の方程式」を考えた場合、クルー(スタッフ)の戦略的行動は?
そう、QSCですよね。
こちらをご覧ください。
-----------< 記事要約 >------------
○引っ越し大手のアートコーポレーションが戸建て住宅型の研修センターの整備を進めている。リアルさを追求した環境で実践的な研修を行い、作業スタッフの技術力を底上げする。
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○研修センターは一見普通の3階建て住宅だが、各所のサイズを少しずつ小さくした。研修では、幅がぎりぎりの廊下や折れ曲がった階段、飛び出た手すりや照明などの「難関」をくぐりぬけ、大型冷蔵庫やたんすを2階に運ぶ。壁などや荷物自体に傷をつけないのはもちろん、作業を迅速・安全に進めるための注意とノウハウを学ぶ。
○アートを利用したことのある顧客が次の引っ越しでも見積もりを依頼した場合、成約率は8割超に達する。引っ越し時に顧客が目にする作業スタッフの技術力と接客力を高めることは、次への営業につながる。
11/01/28, 日経MJ P.9
-----------< 記事要約 >------------
もうおわかりですよね?アート引っ越しセンターは、どうすればお客様から成約をいただけるかをすでに知っているわけです。つまり勝利の方程式が解けている。すなわち、アート引っ越しセンターの作業スタッフの戦略的行動は、どんな作業の難しい状況下でもお客様の壁や荷物自体に傷をつけず、迅速・丁寧、親切かつ安全に作業を進めること、です。そうすれば、次回もご利用いただけると。
マクドナルドとアート引っ越しセンターの事例を意図的に持ち出しましたが、2つの事例を読んで改めてこう思いませんか?
どちらのケースも、複雑なことでもなんでもなく、単純な、考えてみれば当たり前のことをしているだけだな、って。
私たちは、とかく勝利を収めるためには何か複雑なことをしなければいけないかのように思いがちですが、本質とはいたってシンプルなのかもしれません。
「勝ち続ける経営」のあとがきは、こう書いて締めくくられています。
-----------< あとがきから抜粋 >-------------
マクドナルドの強さは一体何なのかあらためて自問してみます。答えは「スーパー・コンビニエンス」と「バリュー・フォー・マネー」です。これらはマクドナルドの基本中の基本で、ここを徹底的に伸ばすことが成長の鍵です。とはいえこれまでと同じ手法では同じ結果しか得ることができません。一貫した基本を、これまでとは違う、革新的なやり方で取り組んで(Back to the basic with innovative manner)こそ違った結果を得ることができます。そしてお客様の期待を超える、独自の価値を創造していくのです。その積み重ねが企業の強さとなり成長する基礎体力となります。
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ハクロマークも来月が期末で、3月からまた新しい期が始まります。ちょうど今、来期の「継栄計画書」を作成中ですが、今回のこの本の出会いが私にその際のヒントというか、来期の戦い方に関して新たな気付きを与えてくれました。当社の従業員の皆さんも、読めば同じように多くの示唆を与えられるはずです。
今年も始まったばかりですが、この一年どんな年になるのでしょうか?日本国は今問題が山積みです。そんな中、正直申し上げて私も不安で不安で一杯です。しかし、よくよく考えてみると今年に限らずいつの時代も不安で、先が読めたなんて年はありません。先が見えない中で、来る年も来る年も今日までみんなで戦ってきたのです。
しかし、座頭市でもない限り、真っ暗闇のなかでは何も見えませんからどう戦っていいのかわかりません。そんな闇夜を照らす明りの役割を果たしてくれるのが、いつの時代も本なのではないでしょうか?この度も素晴らしい本に出会うことができました。感謝です。有難うございました。
「勝ち続ける経営」の中で印象に残ったフレーズ
・お客様の希望ばかり聞くな!自分が信じることをやれ!(お客様のおっしゃることと実際の行動は違うから)
・自己否定せよ(知り過ぎはかえってバリア。経験と知識でジャッジするな。子供はなぜ成長が早いのか、吸収力があるのか)
・出来ないこと、難しいことがあればそれは機会点と捉えよ(みんな出来ないと思っているので、それがもし出来たら独り勝ち。ピンチはチャンスにコンバートできる)
・キャリアは自分で考えるな(自分の可能性を摘むことになるから)
・現場で起こっていることは(経営の)結果であって、原因ではない。
・組織には考える人は1%でいい。行動することの方が大事。
・リーダーとは、チームがベストな結果を出すために、自分の言動をコントロールする力、つまり、今自分はどういう言動をしたらいいのだろうと考えられる力
・何も問題を起こしていない社員は何もしていない証拠。チャレンジしていれば必ずそこには二次的な問題が起こって当たり前。会社も同じ。変革すればするほど、問題課題が出てくる。そこに伸びるための機会点(チャンス)がある。
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